雨 ときどき晴れ☀

~鬱と発達障害とつきあう日々~

一番やさしかった 続き

 

 私は、5月の晴れた日に、いつも、ふるさとにお墓参りに行く。

 その人との思い出の季節に、車を走らせる。誰にも知られることなく。

 

 あの日、私は、何の心の準備もしていなかった。

 兄のように慕っていたその人を、どうしてか受け入れてしまった。本当は、前からそうしたかったのかもしれない。でも、ずっと理性の方が勝ってたということか。

 ずっと信頼して尊敬してきた人。嫌いなわけない。

 

 怖がったり、恥ずかしがったりする私を、その人は、やさしく愛してくれた。時々、気が遠くなりながらその人を見つめていたら、照れたように見つめ返してくれた。

 自分の素直でない心が、彼のおかげで、少しずつ浄化されるような気がした。

 

 その人が言った最後の言葉は深く心に残っている。

 「お前は、強く生きろよ」

 

 

 もっといろいろ話したかった。

 昔の上司としてでいいから。

 たった2年で、その人は遠くに行ってしまった。

 自分の死期を知っていたのだと、あとで理解した。だから、あの日私を呼んだのかもしれない。 

 泣いた。誰にも見られないように。

 

 退職祝いの包みには、小さなイヤリングが入っていた。無骨な彼。どうやって買ったのだろう。想像できない。

 もし、彼が生きていたら、ふざけて聞いてみたかった。

 黙って笑うだけだろうなぁ。

 

 人生にこけそうになったら、どうか私を助けてね。笑

 そうならないように、強く生きるよ。

 

 今日、二男が無事中学に入学したよ。季節は確実にめぐってるね。

 

 ありがとう。忘れないよ。

 あなたのやさしさ。あなたに教わったこと。

 あなたという人を。