相棒といっても、主人のことではない。
12年連れ添った愛車だ。
今回、車検を通らなかった。直そうにも、べらぼうな金額がかかるため、やむなく新しい車に乗り換えることとなった。
長男は、自閉っ子で、刺激を求め、一日中遠くの公園や山で遊んでいた。雨の日も風の日も。雪の日は広い遊び場へ私たちを連れて行ってくれた。
後ろの席で暴れる長男に振り回され、壁にぶつけたこともある。風邪薬を飲んで運転して、ついうとうとして、側溝にはまったこともある。傷が絶えなかった相棒。でも、黙って、いつも私たちを連れて走ってくれた。
子供たちになだめすかしのお菓子をあげたり、食事をしたり、その跡もたくさん残っていて、決してきれいに使ってはあげられなかった。
子供たちの遊び道具や、着替えでパンパンのトランクはいつも砂だらけだった。
友達と上手く遊べない長男を、少し悲しい思いで乗せた私の心も知っている。
楽しそうに遊べた日には、嬉しくて嬉しくて、天にも昇るような、充実した気持ちで運転したことも知っている。
スポ少の大荷物も、野球道具も載せて、遠征先までタフに走ってくれた。
小さな体に、頼れるエンジンを載せて、私たちをいつでも守ってくれた。
私の喜怒哀楽を、あなただけは知っているね。
思い出すと愛おしくて、ハンドルを何度も抱きしめてなでた。
もし、また走れるようになったら、もっと大切に扱ってもらうんだよ。
今までありがとう。大好きだよ、私たちの相棒。