昨日見たような気もするし、ずっと前に見た夢のような気もする。
私は男友達の家にいた。前からの約束で、遅い朝食を一緒に作って食べようとしていた。でも、それは名目だった。私もこれから起こるかもしれないことを覚悟の上だった。
彼は、パスタを作ってくれた。手を出そうとすると、いいからいいから、と言って、「ただのボンゴレだけど」と、手際よく、というか一生懸命作ってくれた。
少しだけ塩気が強かったが、美味しかった。お礼にインスタントコーヒーがあったので、お湯を沸かして2人分入れた。
多くは話さなかった。だいたいのことは、前の日、ラインでやり取りしつくしていた。
「・・これで最後って約束してくれるんだよね?」
彼は頷いた。
「そのかわり、無理矢理じゃないって、合意のもと、だろ?」
当たり前だ。誰が無理矢理されるもんか。。
「あとで恨んでもいいけど、今だけは、そういうことで」
・・・うるさい。
「じゃあ・・あまり時間ないから」
自分で服のボタンを外す。彼はだまって見ていた。
「何?」
「いや・・。いつもそうなの?」
「・・・。」
「ごめん、なんでもない」
ブラウスを脱ごうとした時、彼がキスしてきた。動揺して逃げそうになる。いけない。応える。
動揺したのは、思いのほか優しかったからだ。何度も繰り返す彼。「あぁ、やめて」思わず言ってしまう。
「どうして?」
思い直して、彼に身を預けた。早く終わらせた方がいい。
「・・ほんとにいい?」
「・・・。」
「そんなにしてまで、終わらせたいの?」
うるさいってば。この期に及んで、ためらってるのだろうか?
彼はもしかして初めてなのか、私たちは、少し戸惑い時間をかけて、そういうことに、なった。
降り出した雨の音を、妙にはっきり覚えている。
優しく見つめるのはやめてほしかった。なんだかおかしくなる。
ことが終わっても、彼は、私のそばから離れなかった。
なんだか、思っていたのと違う・・。なぜか胸がいっぱいになる。
でも。服を着る。
これで、私の気持ちは伝わっただろう。
「本当に好きでいてくれたのなら、約束守って」
「わかった・・・」
「幸せになってね」
「・・・。」黙る彼。
「旦那より、俺の方がいいんじゃないか」
「・・何で」
「・・・。」
「昨日今日のつきあいじゃない」
「・・長いこと一緒にいたって、ダメなものはダメだろ」
これじゃケンカになっちゃう。
また最初に戻っちゃう。
あとはあまり覚えていない。急いで、彼の家を後にした。
ふと見上げると、彼が2階の窓から私を見て、目が合うと、ゆっくりと私にバイバイした。笑顔はなかった。
帰りの車の中、短いつきあいだったが、彼のしてくれたことをずっとずっと考えていた。
こうまでしたのだから、彼には新しいスタートを切ってほしい。
そうして、きっと私は、置いてきぼりなんだ。。
しかたない、私も、何かを見つけて進むだけだ。
もう、後悔したり、振り返ったりしない。
目が覚めた。意に反して私は小さくしゃくりあげていた。
外は、夢同様、静かに雨が降っていた。