雨 ときどき晴れ☀

~鬱と発達障害とつきあう日々~

雨物語

 

 昨日見たような気もするし、ずっと前に見た夢のような気もする。

 私は男友達の家にいた。前からの約束で、遅い朝食を一緒に作って食べようとしていた。でも、それは名目だった。私もこれから起こるかもしれないことを覚悟の上だった。

 彼は、パスタを作ってくれた。手を出そうとすると、いいからいいから、と言って、「ただのボンゴレだけど」と、手際よく、というか一生懸命作ってくれた。

 少しだけ塩気が強かったが、美味しかった。お礼にインスタントコーヒーがあったので、お湯を沸かして2人分入れた。

 多くは話さなかった。だいたいのことは、前の日、ラインでやり取りしつくしていた。

「・・これで最後って約束してくれるんだよね?」

 彼は頷いた。

「そのかわり、無理矢理じゃないって、合意のもと、だろ?」

 当たり前だ。誰が無理矢理されるもんか。。

「あとで恨んでもいいけど、今だけは、そういうことで」

・・・うるさい。

「じゃあ・・あまり時間ないから」

 自分で服のボタンを外す。彼はだまって見ていた。

「何?」

「いや・・。いつもそうなの?」

「・・・。」

「ごめん、なんでもない」

 ブラウスを脱ごうとした時、彼がキスしてきた。動揺して逃げそうになる。いけない。応える。

 動揺したのは、思いのほか優しかったからだ。何度も繰り返す彼。「あぁ、やめて」思わず言ってしまう。

「どうして?」

 思い直して、彼に身を預けた。早く終わらせた方がいい。

「・・ほんとにいい?」

「・・・。」

「そんなにしてまで、終わらせたいの?」

 うるさいってば。この期に及んで、ためらってるのだろうか?

 彼はもしかして初めてなのか、私たちは、少し戸惑い時間をかけて、そういうことに、なった。

 降り出した雨の音を、妙にはっきり覚えている。

 

 優しく見つめるのはやめてほしかった。なんだかおかしくなる。

 ことが終わっても、彼は、私のそばから離れなかった。

 なんだか、思っていたのと違う・・。なぜか胸がいっぱいになる。

 でも。服を着る。

 これで、私の気持ちは伝わっただろう。

「本当に好きでいてくれたのなら、約束守って」

「わかった・・・」

「幸せになってね」

「・・・。」黙る彼。

「旦那より、俺の方がいいんじゃないか」

「・・何で」

「・・・。」

「昨日今日のつきあいじゃない」

「・・長いこと一緒にいたって、ダメなものはダメだろ」

 これじゃケンカになっちゃう。

 また最初に戻っちゃう。

 あとはあまり覚えていない。急いで、彼の家を後にした。

 ふと見上げると、彼が2階の窓から私を見て、目が合うと、ゆっくりと私にバイバイした。笑顔はなかった。

 帰りの車の中、短いつきあいだったが、彼のしてくれたことをずっとずっと考えていた。

 

 こうまでしたのだから、彼には新しいスタートを切ってほしい。

 そうして、きっと私は、置いてきぼりなんだ。。

 しかたない、私も、何かを見つけて進むだけだ。

 もう、後悔したり、振り返ったりしない。

 

 

 目が覚めた。意に反して私は小さくしゃくりあげていた。

 外は、夢同様、静かに雨が降っていた。