気温ー8℃。
午前3時。
今年一番の冷え込みの山形市は、静かで風一つなかった。
ただバイクの音と、風を切る音とが耳に響き、走っていると、たちまち指の感覚が「冷たい」から「痛い」に変わった。
「おはようございます」
先に新聞店に来ていた人にあいさつすると、
「今日も道が悪いから気をつけてね。今年はけっこうきびしい天候がつづくよ」
と、声をかけていただいた。
配達を始めて、初めての冬。それがきびしいものならば、来冬は、少し楽に感じるのだろうか?
それなら、その方がいい。
憶することなく・・いや、本当はこわごわ走っている。
雪道があまり怖くなくなったとはいえ、毎日状態は違う。
意外につるつるな道はそんなに大変ではない。
つるつるでも、ぐじゃぐじゃでも、とにかく、ぼこぼこ道が大変である。
低速にしてスピードを落とすが、それでも暴れ馬に乗っているかのような感覚。一瞬のスキが、転倒につながる。そんな時は、両足を落としてゆっくり進む。
配達区域に着いて、何件か回っているうちに、だんだんその日の道路状況にも慣れてくる。
スピードも少しずつ出せるようになる。
言葉では言えないが、それがすごく楽しいと体で感じる。
昨日は月も綺麗だった。
配達が終わり、帰路につくころ、
「お疲れ様、今日も頑張ってくれたね?」
と、バイクをねぎらう。
配達で、意外に温まった体を、今度は冷めないうちに家に帰る。
自然と対峙することと、バイクに乗るということが、自分にとってとても楽しいことであり、新聞配達、やってみてよかった、と思える今日この頃であった。
ずっと、自分に合う仕事、を捜していた。
けっこうな悩みと苦しみの中、いろんな仕事をやってみたけど、
配達と言う静かなこの仕事がすきだ。
変哲のない、今年いちばんの写真とともに