こちらの記事の続きです。
広い公園の駐車場です。
もう、Oさんは着いているはずです。携帯に電話をかけてみると、Oさんの車の場所が分かったので、そちらに歩いていきました。
Oさんの顔が、黒い車の窓越しに見えて、手招きされたので、ドアを開けて入りました。
「すみません、お疲れのところ、来ていただいて・・」そういうと、Oさんはニコニコ笑っています。ほっとして、私もニコニコしてしまいました。
「すみません、何か買ってこようと思ったんですけど、急いでたので」
「あ、いいよいいよ」
「お疲れさまの乾杯しようと思ったんですけど、じゃエア乾杯で」
「ははは」
「カンパイ」
「・・・」
「・・・」
「あの、電話番号ありがとうございました。てっきり断られると思ったんですけど・・」
「あー。男の人に電話番号聞くの初めてなの?」
「はい」
「それと・・今日は説教されるんじゃないかと思って来ました」
「なんで?」
「うーん、家庭があるのに、こんなことしてダメだよって」
「なに?叱られたいの?笑」
「うーん、どちらでも。叱られたらしゅんとして帰ります」
「ははは」
「いいんですか?お友達みたいな感じで、メールとかさせていただいても?」
Oさんは笑ってうなずきました。
「で、映画はダメなんですよね?」
「うーん、ばれるでしょ」
「お友達で、やましいことがなかったら、良くないですか? ばれたくなかったら、席を遠くに離せばいいし・・」
「うーん、でもそれじゃ楽しくないでしょ」
「喫茶店でも、違うテーブルに座って、電話で話すとか」
「いや、やっぱ、それじゃ楽しくないよ」
「そうですか?」
「うん。 夜、車だとこうやってゆっくり話せるし」
「はぁ」
「ね」
「じゃあ、映画はダメですね。残念・・」
話は、Oさんの結婚話になりました。知り合いで30歳以上くらいのいい子いないかな、いたら紹介してほしい、と言われました。
「ガソリンスタンドに来るお客さんで、出会いとかないですか?」
「みんな結構若すぎるんだよね、俺43歳だし」
「男の人は、若い子がいいんじゃないですか?」
「歳の差を感じない人ならいいんだけどねぇ」
「じゃあ、みんなに、〇〇スタンドにイケメンの従業員さんがいる、って宣伝しておきます」
「えー、困るよ、俺イケメンじゃないし。見に来られてがっかりされても困る」
「そんなことないです、かっこいいです」
「いや」
「さわやかだし、優しそうだし」
Oさんは、照れたのか、マフラーで少し顔を隠しました。かわいい。
「なんか、サッカー少年だったような、そんな感じがします」
「野球やってた」
「そうなんですか」
野球好きな私としては、好感度大です。
「・・・・・」
「・・・・・」
もっと何か話したかったのですが、胸がいっぱいいっぱいで、思いつかず、この辺にしようと思い、さようならをしました。
Oさん、また会えるかな?
あ、そういえば、毎日お弁当の配達で会えるんだ!
でも今度からどんな顔して会えばいいかな?
「配達では、素知らぬふりしてね」とOさんに言われています。
配達中は、なかなか話す時間もないし。。
あ、今度、誕生日と、好きな食べ物と、好きなプロ野球チーム聞いておこう。
自分からこんなに人に積極的になったのは、初めてでコワイ。笑
こんな風に青春時代を送れたら、また人生違っていたんだろうなぁ。。
そんなことをしみじみ考えながら、夜の道を帰っていきました。
言い訳かもしれませんが、私は訳あって、青春時代をほとんどまともな人間関係の構築ができずに、過ごしました。
なので、人間を信頼する根っこみたいなものが、欠けていると思うのです。
だから、今、とても人恋しくて、寂しいです。
こうして、今からたくさんの出会いを作れたとしても、青春時代のぽっかり空いた穴は大きいです。
いつかこの穴は、小さくなってくれるのでしょうか?
こういう人生もあったりします。笑
おしまい