雨 ときどき晴れ☀

~鬱と発達障害とつきあう日々~

人の想いは変化する


 この内容はフィクションです。

 コロナ禍も一時治まり、3年以上ぶりに、ママ友たちとお茶したいと思い立った。

 対象は、発達障害の子育てを通じて知り合った、4人の友人。

 それぞれの子供の年齢が近いこともあり、遊びの会などを経て、よく集まるようになった。親だけで、年に何回か、ファミレスなどで何時間もおしゃべりして、元気になることも度々あった。

 遊びの会も、お茶やランチも、主催というか発起人は私Rだった。

 リーダーシップとは程遠い性格で、子供が集団でも遊べるような企画を提案するだけなのだが、みんな子育てに苦労していて大変であり、言い出しっぺの私が連絡を取りつけたり、場所を押さえたり、遊びの準備などやれることは全部やる、というスタンスだった。また、みんなも不満も言わず、好意的に参加・協力・サポートしてくれた。

 

 ただ、私は昔から・当時もとても体調が悪くて、精神科から薬をもらって飲んだり栄養剤やサプリも手放せずに生活していた。なので、ただでさえコミュ障で緊張症なのに、役割がキャパオーバーしがちで、いろんな会の司会・進行も、たぶん声も小さくやっとやっとだった。

 いつも、いろんなお子さんが遊びに来てくれた時は、親御さんたちやボランティアさんたちの協力や、がんばりもあって、何とか、お子さんたちも楽しんで帰ってくれることが多かった。

 程度の差こそあれ、同じような悩みを持った親子が集まるので、やはり一丸になって活動できたのだと思う。

 

 しかし、今日は、そういった良い事綺麗な事の話ばかりではない。

 普通に、一緒にいれば、人のここが気に入らないとかなんとかの話もあっても当然である。

 私は、一人だけ、つきあいに悩むママ友がいた。

 息子と同じ幼稚園の娘さんを持つMさんである。

 子供たちが同じクラスだったりしたので、もともと知り合いで、子育てが見るからに大変そうで、一人ポツンとしていたMさんに、私から声をかけたのが始まりだった。

 娘さんの子育て大変さに負けず、とてもしっかり者で、気配りのできる頑張り屋のママだった。

 子供たちの、体育館などで体を動かせるような遊びは、大体私がアイディアを出したが、毎回は大変なので、Mさんには、手先を使う工作などの遊びを担当してもらった。

 Mさんは、気配りの人で、人の話を聞くのも、共感するのも、アドバイスするのもうまかった。私も、何度相談にのってもらい、励ましてもらったことか。絶対の信頼をしていたし、会を運営するにあたっても、ずいぶん助けてもらった。

 

 しかし、無意識に頼りすぎたのか、彼女がもともとちゃっちゃとしていない人間が好きではなかったのか、時々、わかるかわからない程度に、冷たくあしらわれることがあった。

 当時の私はポンコツで、過酷な育児をやっとやっといていたに加え、前述のように精神をやられていて、判断能力も低く、おたおたしていて、人にうまく接する事ができないでいた。

 そういうこともあり、自分で上手くいっていないと感じると、一番近しいMさんに頼ってしまっていたのかもしれない。

 子供が大きくなり中学生くらいになると、遊びの会も役割を終えた形で、あとは親同士集まって、成長を報告し合ったり、それぞれが受けている療育機関の内容・様子、勉強、進学、友人関係、日常生活の様々な悩みを話すのみになっていった。

 最後にランチ会をしたのは、4年くらい前になるのだろうか、それから私の体調もどん底になり、しばらくお会いしないうちに、コロナ禍にもなり、さらに会えなくなった。

 その間、運良く私は自分に合った民間療法が見つかり、体調が良い方向に激変し、それに伴い、今までやれなくてもどかしかったことすべて、取り返すかのように自己改造するべく頑張った。というか、ただただ体調が整ったことで、自然と感謝の気持ちと、やる気が満ちる毎日であった。

 どこまで自分が変われたのかわからないけれども、職場や近所付き合いが楽しく出来ていることが改善のバロメーターであった。

 

 そして、コロナが落ち着いた頃より、人々が少しずつ再会を始めたこともあって、年賀状を出そうとしていた頭で、お茶ランチ会をまたやりたいと思った次第であった。そういえば、メンバーの中の2人くらいは、偶然スーパーなどでばったり会って、「またお茶会しよう」「一生友達だよね」と言われたこともあった。そういうことも、後押しになった。

 

 メンバー中3人のママたちとは、すんなり再会日時が決まったが、Mさんからは、返事を先送りされ、結局体調不良と、まだコロナに慎重なことから大事をとって欠席との連絡を受けた。グループから、というか、私から離れるだろうと予感していた私は、驚きもしなかったが、会えないということで、メールで娘さんの様子をひとこと聞いたり、一応息子の就職などを報告したけれど、「娘は大学生です」とだけ書いてあって、それで終わりだった。

 

 それから、メンバーのDさんが、LINEでグループを作ってくれた。

 私もそれは考えていたが、一人一人、言えない事情の場合だったり、いろいろメンバー同士思うこともなくはないだろうと、あえて私からは作らず、メールや電話で確認を取っていた。

 しかしDさんが「Rさん、みんなの時間調整するの大変でしょ!」と作ってくれて、とても嬉しく、使わせてもらうことにした。

 Mさんにも、グループLINEに招待したいからと、一応コンタクトを取ったが、「SさんとLINEがつながっているから、Sさんに聞いて招待してください」とのことだった。そして、当たり障りのない挨拶の言葉が並んで終了した。

 

 私の中では、彼女も、10数年一緒に子育てを頑張ってきた気持ちがあり、感謝であり、互いに心身ボロボロの同志ではあったけれども、一点だけ許せなかったのだと思う。

 Mさんは私に対してイラついたこともあっただろうが、相手はそのことに全く気付かず、傷つかずにいたとでも思っているのだろうか。私だって、10数年、顔にも出さず、Mさんはもちろん、誰にも言わずに我慢してきたのだ。子供たちのためでもあるし、Mさんの事情も想像し、自分の尊厳も辛うじて保つために。

 

 

 私は、Mさんに次のような返信をした。

 

 

‶お忙しい中ありがとうございます(^o^)

グループラインにつきましては、ご都合の良い時に、Sさんを通じて自由にお入り頂ければと思います。

当分の間、お会いできないということで、この機会にMさんにも私から申し上げたいことがありました。

私もあまり大っぴらに出来ない身体の不調等を昔から持っていて、そのストレスからさらに心身に不調が連鎖していたのですが、ちょうど3年前くらいになりますか、民間療法で合うものが見つかり、幸いにして寛解しました。

言うならば、長いこと、最悪のコンディションの中、皆様におつきあい頂いていた訳で、多大なご迷惑と、少なからずご負担をおかけしていた事を心苦しく思っております。

大変な子育ての中で、このような状況下お集まり頂き、ご協力頂いた事に感謝するとともに、深くお詫び申し上げます。

メールにて失礼致しました。
それでは、どうぞお健やかにお過ごし下さい。”

 

 

 

 いつものような、親しみを込めた書き方はしなかった。

 それから、いつも、返信に半日から一日以上かかり気味のMさんから、1時間で返信が来た。

 

 

 

‶とんでもありません。ご負担とご迷惑をおかけしていたのは、こちらの方です。いつも場を設けていただき、心から感謝しております!

Rさんがいらっしゃらなかったら、ここまで皆さんとのお付き合いが続いていたかどうか...

なかなか参加できないことを大変心苦しく申し訳なく思っています😢

私も、年齢のせいなのか、一度体調が崩れると、薄皮をはぐようにしか良くならないんですよね。

お互いに無理せず、ほどほどに頑張って、日々を乗り切りましょう!良くなられたとのことですが、まだまだお大事になさって下さい。

では、またの機会に😊

就職、良かったですね!”

 

 


 返信は、ここ近年の、のらりくらりした私に対しての感じとは違ったので、Mさんも感じるところがあったのかもしれない。

 そういうことに関して、満足感やリベンジ感はなかったけれども、逆に私から切ったような罪悪感のような錯覚があった。


 Mさんも、私の気付かない所で、我慢して来たことが、それは沢山あったかもしれない。

 でも…

 Mさんには、人に対してそういうことはしてほしくなかったのが本音。


 

 それから、数日が経つけれども、不思議なことに、首のあたりにずっとあった、カサカサの皮膚のかゆみがすっかりなくなっていた。

 最初に車で追突事故を起こした時に、全身じんましんが出たように、ストレスで時々皮膚炎を起こすのだが、今回の件の副作用は、「自分の意見や態度をきちんと出せたこと」だったのかもしれない。

 それほど、以前の私は人に怯えて、自分の考えも持てず、信頼もされず、悪循環の人間関係であった。弱い自分には、本当に優しく良い人だけが残り、つきあってくれる、そういう利点もあったけれども、それでは世の中を渡っていくことはできない。

 息子を育てながら、本当は「自分育て」の年月だった。

 誰でも悔しい思いをする、だけど向かい合って自分を改善しようとしない限り、解決策はなく、苦しみが続く。それを、誰かのせいにすり替え、人を恨む人生は本当に空しい。

 紙一重で、運よくこれを脱した身として、その後の穏やかな気持ちを悩む人にも伝えたいと思う。ネガティブにではなく、楽しみながら伝えていきたい。

 

 Mさんについて、彼女とは、長いつきあいで、貴重な時間を共有した同志だから、その思いは変わらないが、関係が切れようと切れまいと、どうでもいい。

 Mさんが切れたいならどうぞ。

 私は私の考えで、昨日今日のつきあいじゃないんだから、いつでも助け合うし、その代わり、言いたいことははっきり言わせてもらうよ!

 昔のように、頼ってばかりじゃないので。覚悟して頼りなさい笑

 





 

  


↓お忙しい方はスル~よ!