雨 ときどき晴れ☀

~鬱と発達障害とつきあう日々~

ショートショート2/2

 

 仕事の合間に少しずつ会話を重ねて、多分お互い楽しくて、仲良くなりつつあった時、彼女が僕の本業の方の休みを聞いてきた。

 僕が「月曜日」と言うと「じゃあ、午後にでも、ちょっとお茶でも飲まない?」と誘ってきた。えっ、と言うと、「Tさん面白いから、もう少し話してみたい。30分くらいおしゃべりしよう?」と言う。Kさんは、そんな感じのお茶のみ友達がたくさんいて、僕もその一人として誘われたらしい。「おばちゃんの茶飲み相手なんだから気を使わずに、普段着で来てくれていいから」とも言って笑っていた。

 実際は、Kさんは今まで心身共に体調不良で生きてきたのが、ようやく治り、短時間ながら社会復帰も出來、人とふれ合うことにも喜びで一杯なのだと言う。人間関係に面倒くさがり屋の僕には、よくわからなかったけど。 


 ところで彼女は結婚しているし、とりあえず「友達以上にはならないからね」とクギを刺しておいた。彼女は冗談ぽく「何だか振られた気分だ!」と笑った。

 そして今まで、休日といえば家でゴロゴロしていた僕は、断る理由もなくOKしたわけだが、月曜日が近づくにつれ、なんとなくワクワクしてくるのだった。

 

 彼女は最初、年上というのもあり、優しくて、頼めば言うことを聞いてくれそうな人、という印象を持っていて、僕はちょっと甘えて侮っていたのかもしれない。

 高校生の時に、好きだった女の子に振られて以来、女性に縁がなかった僕は、彼女と軽くドライブする中、なごやかに話をしたり、道の駅でお茶したりしているうちに衝動を押さえられなくなり、結局彼女を抱くに至った。彼女は「心の準備もなにもしてない」「今日いきなり?」と困惑していたけれど。

 

 それから、彼女にお金を借りたこともある。僕は兄と住んでいて、食費は自分の担当だったが、足りなくなったら兄に頼んで出してもらってもいいわけなのだが、兄は元奥さんに子供の養育費を払っているため、あまりそうしたくなかった。

 ちょっとささやかな趣味で車の部品を買ったり、作業着の良いのを買ったりすると、当然生活が厳しくなる。煙草をやめればいいのだろうが、なかなかやめられなかった。

 2万円くらいを、2回ほど借りた。1回目は「大変だから、今回だけ返さなくていいよ」と言ってくれた。そして2回目も返さずズルズル甘えてしまい、

 3回目に「ごめん、また借りれる?」と言ったら、彼女はうーんと考え、メールで「1回のデート代を〇〇〇〇円として、1か月会わない約束なら、これだけの金額を貸せます」と提示してきた。返事は返せなかったが、次に顔を合わせた時、その金額を渡されて、受け取り、約束通り1カ月会わなかった。

 その後、たまたま仕事が増えて、少しではあるが給料も増えたこともあり、そしてお金を引き換えに会わなかったことに、ようやく恥ずかしさを覚えた僕は、二度と彼女に迷惑をかけることはなかった。

 

 

 こんなダメな僕だったけど、なぜか彼女はたまに「世界で一番好き」「全部好き」「生きてるだけでいい」「神様みたい」とまで言ってくる。ここまで来ると眉唾だが、つきあってから、ずっとだ。そして

「Tさんはいいお父さんになりそう」「Tさんに好きな人が出来たら、追いかけないから、正直に言ってね」と言う。屈託のない顔で。

 うん。

 一応そう返事はするものの、複雑な気持ちだ。

 

 彼女が何を考えているのか、本当は僕をどう思っているのか、心の中を覗いてみたくなる時がある。

 

                  2/2+1最終回答え合わせに続く