雨 ときどき晴れ☀

~鬱と発達障害とつきあう日々~

浴衣の向こうに

 

 ある人にさよならを告げた。

 ちょ、ちょっと待ってと言ったきり、無言になる目の前の人。

 あぁ、この人のこの顔を見ると、いつも心が揺れる。だから、目を閉じていた。

 しばらく黙っていたが、静かに話し始めた彼。

 いつもの元気な感じではなく、初めて聞く、訥々としたしゃべり方。

 

 私をまっすぐ見て話す。時々腕組みしながら。

 時々宙を仰ぎ、考えるようにしながら。

 

 私の思っていたのとは違う考えを聞いた時、私は泣いた。

 自分が浅はかだった。 

 

 浴衣を着て出かける約束は実現されなかった。

 当然だと、そしてこれからも、ずっと何かに縛られた、悲しい結末だけを考えていた。

 

 この人は、私の、みんなの幸せを考えてくれていた。彼なりに。

 最後までその人の器の大きさに包まれていた。

 

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 そしていつもの調子に戻り

 「蕎麦食いに行こうぜ」

 そんなふうに笑った。

 

 

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