雨 ときどき晴れ☀

~鬱と発達障害とつきあう日々~

感謝して残業

 

 山形県を中心とする南東北で、今、高校総体が開催されている。今日は開会式で、皇太子さまもご来県、出席された。

 そのため、国道13号線では交通規制があった。それが、私の配達するルートにもかかっており、今朝になってそのことを聞いた。いそいで同じ方角の女性に迂回する道を聞くと、親切に教えてくれたのだが、いささかその説明がアバウトで、「ここをこう行ってああ行くと、いつもの道に出るから!」と言われた。地図も書いてもらったが、目印がなく、要領を得ない。思わず「いつもの道ってどこよ?!」とつっこみたくなったが、行けばわかるのだろうと思い、少し不安ではあったが、時間も押していたので、とりあえず出発した。

 それが悪夢の始まりだった。いつも通る道の顔と、横から入る時の顔は違う。どれが「いつもの道」なのかわからなくなった。交差点を一つ間違えたのかもしれない。もう一度もと来た道を戻って、地図通りにやり直せば良かったのだが、焦って、「いつもの道」を方向感覚を頼りに見つけようと試みてしまった。しかし案の定見つからず、知らない景色ばかりが目に映った。

 それで、無線で会社に自分の走っているところの目印を伝え、「迷ったのですが、どう行けばいいか教えて下さい」と聞いた。すると、「もう、交通規制解除されました!そこからなら、13号線に出た方がいいです。くれぐれも南には行かないように。〇〇方面ですよ。そして、ここをこう行ってこう行って下さい。いつもの道に出ます」

と言われた。また「いつもの道」である。 

 奇跡的に13号線には出た。しかし、迷った。どっちが北なのか。冷静になればわかったのだが、その時は気が動転して、一か八か左に曲がった。すると、残念なことに「南方面」という看板がいきなり現れた。ガーン!

 よし、Uターンすればいい。しかし、国道、行けども行けども信号がない。仕方なく一度国道を降り、入り直すことにした。そこで、長い長い信号と、渋滞の波に飲み込まれた。相当のロスだ。やっと国道に方向転換して入り、スピードを上げる。しかし、配達区域には程遠くなってしまった。配達1件目を終えたのは、なんといつもより1時間遅れであった。顔面蒼白である。察したように会社から無線が入った。

「rさん、あらかじめ遅れるところに連絡入れておきます。どこがどのくらい遅れるか、教えて下さい!」

 考える余裕はない。でも答えなければ。だいたいの予測時間を伝えると、案の定「困りますね」と怒られた。「すみません・・」としか言いようがない。

 配達を進めていくと、そんな追い詰められた状況の中、ふと妙な考えが浮かんだ。

 あれ、私速いよね?

 開始時間はもちろん遅いが、予測した時間よりずっと早く配達できそうだ。いや、勘違いか・・ 雑念を振り払って黙々と走った。

 

 前半終了時刻30分前に、もう配達の終わった社員さんが、無線で報告をし始めた。

 いいなぁ・・もう終わったんだ・・私はこれから頭下げながらの配達、何件残ってるだろう・・

 すると、その自分の配達の済んだ社員さんがこう言った。

「rさんの配達、手伝いましょうか?」

 ありがたかったが、それも難しいことだった。どこかで場所と時間を指定して落ち合わないといけない。そんな時間はない。

 でも、幸い同じ商品をいくつか持っていたため、最後の2件の事業所だけ、社員さんと上司に直接、行ってもらえることになった。それだけでもすごくありがたかった。

 そして、終わってみれば、時間に遅れたところは、3か所、最大12分の遅れ。それぞれの事業所で頭を下げた。遅れは遅れだ。でも、社員さんと上司に協力してもらったおかげで、最小限の遅れで食い止めてもらえた。それから、事務員さんにあらかじめ電話をしてもらっていたので、事業所からたいしたお咎めもなかった。1時間遅れると思ったことを考えると、本当に力が抜けた。

 会社に戻ると、助けてくれた社員さんが帰って来ていたので、お礼を言った。すると、「いいよいいよ」と恥ずかしそうに行ってしまった。上司にも後でお礼を言うと、「そんなのいいんだからな」と言って下さった。事務員さんには「早い段階だと、こういう状況の時、助け合えるんだから、いいのよー」と言われた。

 本当に、皆さん優しくて、かえっていたたまれず、もうこんなことは起こすまい!もっと地理を勉強する!配達地区のエキスパートになる!と心に誓ったのだった。そして、私が誰かを助ける立場にならなければ、と思った。皆さんの心がうれしかったのは、言うまでもない。

 

 

 今日は、残業があった。これは前もって決められていたことだった。商品を入れる箱を作る作業。こういうのは得意だ。会社に少しでも恩返しというか、周りを楽にさせたくて、黙々と作業した。みんな頑張ったので、早く終わり、いつも遅くまで作業している社員の人たちは喜んで下さった。

 いつも一人で配達しているので、みんなで作業するのも久しぶりのことで、新鮮で楽しかった。こういうのも、悪くないな、会社の一員みたいで、と思った。

 

 今日は最初は、最悪の一日になると思っていた。一人で最後まで各事業所で謝りながら、配達を終えるのだと思っていた。でも、終わってみれば、助けてもらい、人の優しさを感じていた。こんな会社や周りの人たちを愛し始めている。

 仕事はつらいとか、苦しいとしか思ったことがなかった。楽しい、みんなともっと働きたい、と思ったのは、これが初めてである。

 帰りは土砂降りだったが、心は爽やかで、車中で心地よい疲れと、明るい気分に浸っていた。