雨 ときどき晴れ☀

~鬱と発達障害とつきあう日々~

ヒロタニ上司

 
 はっきりしない淡い空気なのに、鈍い自分程度のアンテナでも感じる。否が応でも。

 時々、気恥ずかしさのあまり

 「なんでそんなことするのよ」と腹が立ちながら、身の置き所がなく、それでも自分からはなるべく距離をとっている。
 


 社員の広谷さん。
 入社したての頃は、話しかけるとぶっきらぼうで、機嫌が悪いのか、冗談は通じないし、何か私が気に障ることをしたのか?といつも思っていた。
 なので、自然「苦手な話しづらい人」の部類に入れて、触らぬ神に祟りなし、あまり気に病まないようにしていたものだ。
 
 新聞店の上司で、私の配達3区画のうち、2区画は彼の担当地区なので、最初は広谷さんに付いて、一緒に周って教えてもらった。
 広谷さんは、教えてくれるにあたり、開口一番「面倒くさいと思ってないから」と言った。

 は?
 まぁーそういえば以前、仕事のことで何度も聞いた時に、忙しかったのか、
 「めんどくせーな」と言われたことがあったような、ないような。

 その時は私の方こそムッとしたけど、別にどうでもいいや。
「苦手な上司」なので早く覚えて、一人で配達できるようにしよう、と考えていた。

 練習中は、最初は行き違いみたいなものもあったが、思ったより丁寧に、親切に教えてもらったので、素直をモットーに臨んだこともあって、スムーズに数日が過ぎた。
 後半に休憩タイムを取ってくれて、ちょっと会話したり、コツを教えてもらったり、配達に関して不安のないようにしてくれたりもした。さすがプロだなぁ、と思うところもあった。

 人には添うてみよ馬には乗ってみよ、というけれど、そんなわけで、少しずつヒロタニさんとは、以前よりは話せるようになり、彼の印象も少し良くなっていった。


 
 昨シーズンは、雪がほとんど降らなかったが、今年は割と降っている。
 私は雪道に弱く、配達をやっと終わらせて戻ると、
 「どこをほっつき歩いてるのか、心配したよ」
 と笑って言ってくれたり、大雪の時、実際配達区域に来てくれて、難所数か所を手伝って下さったりもした。


 ちょっと恥ずかしくて閉口するのは、よく私の動線上にいること。無視することもできないので、顔を見たり挨拶したり、話したりせねばならない。
 話しかけられる前に、退散しようと思うのだが、なかなかそうもいかぬ。

 どうせ、今だけなんでしょ、と思うし、まぁ、どうせ今だけなんだろう。 
 一時だけの優しさなら、そういう人だったんだ、と思えばいい。

 広谷さんが、昨日まで3連休でいなかったことで、感じた微かな寂しさは、気のせいなのだ。きっと。

 平常心で不配なく、迅速丁寧な配達を心がけよう。
 明日もきっと雪だ。