この話はフィクションです。
昨日、あっちゃんと休みが合ったので、会うことにした。
あっちゃんは、バイト先の先輩で、でも私より一回り年下の男の子。ちょうど一年前私がバイトを始めてすぐくらいから話すようになり、気が合いそうだと思ったので、「ちょっと30分くらい、マックとかでおしゃべりしない?」とあっちゃんの休みの日に軽い気持ちで誘ったのがきっかけで、仲良しになった。
それからというもの、あっちゃんのお仕事がお休みの時に、よくドライブに連れて行ってもらったりする。
人生はいろいろある。
あっちゃんは、始め、「友達以上にはならないから」と私に言った。
既婚者の私は、もちろんそれで良かった。「あら、なんか振られた気分だなぁ~」と冗談交じりに言って笑った。
いつだったか、山の方をドライブ中、あっちゃんは「少し休憩」と言って、道路脇のスペースに車を停めた。そして、助手席の私の膝の上に、ころんと横になった。
「ねぇ、お願いがあるんだけど」
・・・。
何と言われたのか、よく覚えていない。
私は一度断ったのだが、
「俺○○さんだったらいい」と、自分が初めてだということを打ち明けられ
正直、私も彼に好感を持っていたので、断り切れなかった。
「・・1回だけ?」「1回だけ」
「内緒で?」「・・内緒で」
あっちゃんは、緊張していたのか、なかなかうまくいかなくて、
私も一生懸命したつもりだったが、コンドームをつけるのも難しかった。
「立だねなー」
「ね、無理しないで、この次にしよう・・?」少々疲れてきてしまった。
「いや、今日する」
ずいぶん時間がかかって、結局その日は自分の手でしてもらい、最後に口で受け止めた。
それから1年。
あっちゃんは、私のやっかいな心の穴をいつも埋めてくれた。
ドジな私にやさしく突っ込み、いつもフォローしてくれた。
もうすぐ、転勤や引っ越し、新生活の季節がやってくる。
もうすぐ、ここ山形にも、感染者が出るだろう。
ふと、帰りがけに
「来週は、どうなっているかわからないね」とあっちゃんに言った。
「来週は、普通に休みだよ」
何事もないようにいう彼。
「あっちゃんがいなくなったら寂しい」
隣国では、比較的若い人も亡くなっている。
「それは、どうなるかは、わかりませーん。」
・・・。
「そればっかりは、わかりません。」
これは、正直な彼のいつもの口癖である。
「そんなことわかってるよ。あえて言わなくってもいいでしょ」
目の前がにじんで見える。
「あ、ごめん。」
運転しながら、左手で私の手をにぎる。
「大丈夫、そんなに簡単にいなくなったりしないから」
「あっちゃんに奥さんがいて、健康管理してくれた方がマシだ・・!」
忙しく働き、いつもお店のお弁当が主食の彼が、いつも気にかかる。
「会えなくなってもいいから、生きててね」
「うん」
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一人離れて暮らす姪っ子。来年巣立つ長男。
彼らが小さかった頃の、平和な日々を思い出します。
なんと大変な時代になったことだろう。
大人がもう少し謙虚に生きていれば、いろんなことが変わっただろうか?
各々が培った、今できることを、知恵を出してやっていきましょう。