雨 ときどき晴れ☀

~鬱と発達障害とつきあう日々~

浴衣と口紅

 

 口紅はおろか、リップもつけない。一度ファンデーションを塗ったら、一日そのまま。最近は仕事で腕を露出しているが、日焼け止めもろくろく塗らないので、汚いくらいに焼けている。

 そんないい歳をしてズボラな私に、友人が口紅を突然くれた。

 女性らしいものをプレゼントされると、昔からなんだか恥ずかしくなる。薄いピンクの口紅。オレンジ系しか持っていなかった私に、「絶対こっちのほうがいいって」と言って渡された。

 それから「古い浴衣があるんだけど、いらないか?」という。もう捨てるからよかったらもらってほしいという。

 ちょうど、風情ある温泉に行ったばかりで、「ゆかた、いいなぁ」と思った。

 いいのだろうか?と思いつつ、いただけることになった。どんなゆかりのある浴衣なのか聞いてみたが、お茶を濁すばかりで教えてくれない。

 「それ着てどこか行こう?」

  ・・・。

 「どこか遠くの町とか」

 「半日でいいから」

 「ただ歩いているだけでいいから」

 返事し難く、だまっていると、友人が「そんな顔して見つめないでよ」と笑った。

 この人とはもう、終わりに近づいているのかもしれない。友人以外に存続できない私たち。私も最近心が揺らぐことがあるのだ。

 胸の奥がつかえるようにぎゅーっとなった。

 切ないと、世間では言うらしい。こんな気持ちを。

 

 

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